お久しぶりです、元気です!
結論から
単三乾電池4本の電池BOXにおいてうずまきバネ式の抵抗は0.4Ω程度あり、板バネ式の20倍程度でした。
電池電流が4Aのとき、うずまきバネ式の損失は6.4Wに達し使用する負荷の半分が電池BOXで熱として消費されてしまうため、モーター駆動など2Aを超える高負荷の用途には板バネ式を使用する必要があると判断します。
うずまきバネ式の電池BOXの抵抗の内訳:
※記事執筆後に指摘を受け抵抗の主因について調べた結果、バネの接触抵抗ではなかったため一部追記修正しています。
経緯
私は現在モータードライバーの設計中をしているのですが、これは単三電池4本から4V / 4A程度の出力を取り出す仕様にしています。
現在、digikeyなどのサイトで入手できる8割方の電池ボックスはマイナス端子がうずまきバネ式なのですが、負荷を掛けたときの電圧降下が大きく設計値を満たせないことから、今回板バネ式の電池ボックスと計測・比較しました。
電圧降下の計測
条件:電子負荷を用いて各負荷電流のときの電池BOXの金属端子間の電圧を測定する。
※使用している電池BOXは全て新品、乾電池は同じ単3型eneloop(ニッケル水素電池)を使用しています。
結果グラフ:
負荷電流が大きいほど電池ボックスの内部抵抗による電圧降下が大きくなることが分かります。内部抵抗の詳細調査は後述します。
結果データ: 枠の着色は上記グラフの線色に対応しています。ノーブランドはグラフから省略しています。(TAKACHIの電池ボックスはうずまきバネ式の中では良質だといえます)
接触抵抗の計測
乾電池BOXの抵抗の換算値を求めました。
条件:電子負荷を用いて4Aの負荷電流を掛けたときの新品の電池BOXの端子間の電圧を計測。次に各々の乾電池両端(電池BOXにつけたまま、乾電池本体の端子)の電圧を測定。 乾電池4本の合計電圧から電池BOXの電圧を引いた値を電池BOXの抵抗による電圧降下として計算する。
結果データ:
本記事冒頭の結論で述べたとおり、うずまきバネ式と板バネ式では非常に大きな抵抗の差があることが分かりました。
電池BOXの抵抗の主要因の調査
うずまきバネ式の抵抗値が高い原因を調べました。
調査方法:4Aの負荷を掛けた状態で写真のように各部電圧降下を測定し換算抵抗値を出す。さらに全体の抵抗値に対する割合を算出して主要因を調べる。
結果データ: 計測点の色とデータ項目の背景色、グラフの背景色が対応しています。
材質はメーカー様の図面より引用:https://www.takachi-el.co.jp/products/MD
導電率参考は右記サイト様から引用:https://www.mac-wire.com/technology/cp-conductivity
以上より、抵抗の主要因がうずまきバネ自体の抵抗値、ついでバネの接触抵抗であることが分かりました。この2つで全体の92.2%になります。
うずまきバネ自体の抵抗値についてはデータに記載した通り、バネ素材の硬鋼線は銅の1/10程度の導電率しかない上に(縮んだ時の)構造が中空であるためと推測されます。
バネの接触抵抗は単純に板バネに比べて接触面積が少ないためと推測されます。
UTiCd (@UTiCd) | Twitterさんにご指摘頂きました。ありがとうございます!
電池BOXの選定を考える
板バネ式はうずまきバネ式に対して抵抗の性能においては圧倒的に勝っていますが、電池の出し入れが少しスムーズでなかったり、コストが高めだったりと全てが優れている訳ではありません。またこれは重要な点ですが軽負荷ならうずまきバネ式でも損失的に全く問題ありません。
軽負荷の例:
5V / 200mA (1W) の自転車用ライトの場合、うずまきバネ式電池ボックスの抵抗を0.4Ωとすると損失は0.016W、負荷に対する電池BOXの損失の割合は1.6%とわずかです。
よって電池BOXの選定に際しては軽負荷ではうずまきバネ式を採用、1Aで板バネ式の適用を検討し始め、2A程度を限度に板バネ式とするのが良いのではと私は考えます。私のモータードライバーは4Aなので板バネ式ですね。
(上記は電池4本の場合です。選定の際は電池の本数に比例して接触端子(と抵抗値)が増減することも考慮してください。)
終わりに
いやぁ...電池BOXひとつ選ぶのも中々大変ですね!本記事が何かの参考になれば幸いです。それでは!