チカラの技術

電子工作やプログラミング

ハードオフで購入した未完成の半導体を動作させました

こんにちは。
私は普段、完成品の半導体を使って電子工作をしていますが
今回は未完成品を買って組み立ててみました。

ハードオフとは

家電,オーディオ,ゲーム機器などの中古商品やジャンク品を扱うショップです。
ACアダプタや各種コネクタケーブル等も格安で販売しているので電子工作をする方にも便利なお店です。
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半導体を購入しました。

ハードオフのPCサプライコーナーで見つけた謎の半導体入りケースを540円で購入しました。

頑丈なアルミケース。
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内部には三端子アレイが保管されています。
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三端子アレイの正面と背面。 f:id:powerOfTech:20180220212608j:plain f:id:powerOfTech:20180220212606j:plain

製造状態にはバラつきが有りボンディングが未完全なもの(写真右)が有ります。
ピンによってボンディングワイヤーの太さが違うのが興味深いですね。

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調べる

5W1Hが一切不明の謎半導体ですが、TO-220系の三端子ですので
よほど特殊でなければバイポーラトランジスタ,FET,レギュレータのいずれかでしょう。
私はシリコンパターンから種別を類推する知識がないため
これ以上は組み立てて電気特性を調べなければ分かりません。

ただ、恥ずかしながら私は未完成の半導体を組み立てた経験が無いため
まずはパッケージについて調べてみました。(間違いが有ればご指摘願います)
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番号 名称 素子の状態 技術用語の補足
リードフレーム 赤矢印(↕)の範囲はメッキ処理が施されている。中央ピンのみダイのベース部と繋がっている。ダイのベース部はピンより厚い。 リードフレームは銅板をプレスで型抜き、フォーミングしたパッケージの基材。はんだ性を向上させるため端子部はメッキされる
シリコンダイ リードフレームとはんだ付けで接続されている。 信号用途のダイはリードフレームに銀ペーストの導電接着剤で接続されるがパワー半導体ははんだ付けが用いられる。またダイのボンディングパッドはシリコンにアルミを真空蒸着させて生成する。
ボンディング 左右のピンがダイとボンディングワイヤで接続されている。(写真の素子は左側が切れてしまっている)材質は色からアルミニウムと推測される。左側に比して右側のワイヤが太い。 ワイヤの材質は金,銅,アルミニウムが主に使われる。ボンディングははんだ付けではなく、専用機を使用して熱、超音波、圧力などを用いて接続される。

以上で概ねの構造は分かりました。

組み立てよう

3つのピンは横方向の支持部でショートされているためカットする必要がありますが、
先にカットすると左右のピンが宙ぶらりんになってボンディングワイヤーが切れてしまします。
ですので、まずは樹脂でピンの根元を固めてあげる必要があります。

ごっつい金切りバサミで切り離し・・・ f:id:powerOfTech:20180224215753j:plain

樹脂ポッティング。シリコン型にUV硬化型レジンを流し込みます。太陽光下で30分で硬化。
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硬化後、リューターで支持部をカットします。 チュイィィィン!! f:id:powerOfTech:20180224210035j:plain

半導体の確認はチェッカー(LCR-T4-H)を使用します。
以下は手持ちの2SC1815 をチェッカーで計測した例。ピン番号(左から1,2,3)と機能が表示されます。
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それでは組み立てた半導体をチェックしてみましょう。
うまく出来ていれば上記写真のように表示されるはずです。



・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

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左ボンディングワイヤ・・・切れるっ・・・!!
非常に切れやすくわずかな力で簡単に切れてしまいます。
補強のために左ピンをはんだ付けしましたがそれでも切れてしまいます・・・

続けて試作を繰り返しますが中々うまくいかず、
樹脂モールド以前に壊れた素子も含めると20個以上も失敗しました。

可愛い半導体たちが死屍累々・・・
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しかし、3日間試作を重ねることで、ついに動く素子を組み立てられました!
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やった。
しかし、何かがおかしい。
トランジスタなのに、なぜかFETのように寄生ダイオードが表示されています。
まさか半導体自体が不良?ハードオフで不良品が売られていたのでしょうか?
しかしハードオフの店員さんは本品をチェックした様子も表記もないので自分で調べるしかありません。

動作を確認するため振動モーターを駆動する回路を組みました。
結果、以下の図示のようにコレクタ(C)とエミッタ(E)をチェッカーで表示された位置と
逆につなげばトランジスタっぽい動作をすることが確認できました。
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不良じゃなかった!(ピンのテレコの原因は分かりません)

さらに詳細を調べるため電気特性を計測しました。
(振動モーターの回転をロックして電流を最大にしています。テスタには0.104Aと表示されています) f:id:powerOfTech:20180224214851j:plain
回路図とSW1がONの時の各部の電圧、電流。 f:id:powerOfTech:20180224214859p:plain

んー・・・コレは本当に一体なんなんでしょう?
トランジスタにしてはVbe,Vce,電流ゲインがやたら大きい・・・

トランジスタ以外の半導体か否かを検討してみます。

 ・ベースに電流が流れているのでFETやIGBTではない。
 ・SW1のOFF時に即座にモーター電流がカットされるのでサイリスタやトライアックではない。
 ・左ボンディングワイヤが細い(流せる電流が小さい)ので電圧レギュレータ―系の可能性は低い
  (シャントレギュレータはrefピンに電流が流れないので可能性がある)

上記を加味して検討すると、ダーリントントランジスタが一番近い特性だと考えています。
(それにしても各部の電圧が大きい・・・)

まとめ

まとめます。

 ・ハードオフの店員はなぜ買い取ったし。こんな用途不明の物体を誰が買うんだ・・・私だ。
 ・ボンディングワイヤが繊細過ぎて手作業でのモールドはとても難しい!
 ・これはダーリントントランジスタかな?

もし、半導体の種別について予想が付きましたら理由と共にコメントにお願いいたします。
出来るだけ回路を組んで確認してみようと思います。  

2018年3月1日追記:型式を調査、判別しました!
power-of-tech.hatenablog.com

補記

青いケースが非常に丈夫なため、本品が作りかけの一時保管品だったとは考えていなかったのですが、
Twitterにて複数の半導体工場経験者の方から情報を頂きましたので転記させて頂きます。

@GHLK4さん
「私も、遥か昔の事なので、工程名とか忘れてしまいましたが、私が居た(半導体)工場では、
 ボンディング→パッケージの注入→メッキ→カット&フォームまで、
 このごっついアルミのカートリッジで流れてました!( ̄▽ ̄)
 何でしょうねぇ、閉鎖した工場でもあったんですかねぇ…(^_^;)」


@JupiterX060さん
「前職が半導体関係の会社だったので懐かしいものを見た〜。
 リードフレームは多分樹脂封入のために使うテスト品っぽい。
 大抵はワイヤボンディングの不良品はテスト品に回されます。
 青い箱はリードフレームの運搬などにつかうものです。 この箱の値段もおっかないんですが…。」


情報ありがとうございます!
なるほど・・・電子工作をしていても、まだまだ知らないことが沢山有り興味深いですね!